「G」から「L」への移行

米国でトランプ大統領誕生したが、これは実はグローバリズムからローカリズムへの回帰であり、英国のEU離脱「ブレグジット」と同様の動きであると喝破した人がいる。

 それはこのブログの主の冨山和彦さんだ。

 彼の主張はかなり長文なので興味のある人は下のリンクを読んで貰えば良いが、彼の主張を短くまとめるとこうなる。

 まず、第一にトランプ大統領誕生の背景は、いかのようなものだと言う。

 グローバルエコノミーの中で急上昇していく人たちを「Gの住民」と呼ぶ。

 ローカル経済の中に閉じ込められている人たちを「Lの住民」と呼ぶ。

 実は、どんな国でもLのほうが圧倒的多数派だ。少なくとも8~9割ぐらいがLであり、アメリカでは9割くらいがLだろう。

 今回の、そのLの人たちが「政治もメディアも、俺達のことを全然見ていないじゃないか」と反乱を起こしたというだけの話だ。

 そして、第二にグローバリゼーションの欠陥と限界をこう述べる。

 そもそもグローバリゼーションは、国と国の間の格差は縮めるが、国の中の格差は広げる。かつ、先進国ではグローバリゼーションのメリットを享受できる人が少ない。現実の移民の9割以上はLの世界に入ってくる。

 インテリが間違っているのは、グローバリズムを進めることが進歩であって、ローカリズムが退行現象だと思っていることだ。西洋のインテリも日本のインテリもそう考える傾向がある。

 第三には、歴史的に見て根も、常に振り子の原理が働いていると説く。

 100年前のヨーロッパは帝国の時代だった。帝国は、民族や国を超えようとする動きであり、ある種のグローバリズムと言える。

 当時、帝国主義の反動として、民族自決主義の流れが生じ、それが第1次世界大戦の引き金となった。民族自決主義とはある種のローカリズムだが、当時はそれが進歩的な考え方だった。

 つまり、長い歴史で見ると、グローバリズムが進歩であって、ローカリズムが退行現象というわけではない。グローバリズムとローカリズムの振り子が100、200年の周期で動いているだけだ。

 世界史を見ると、アレキサンダー大王の時代から、世界は帝国型のグローバリズムと、群雄割拠のナショナリズム、ローカリズムの振り子を繰り返しながら、発展してきている。

 必ずしも帝国の時代やグローバリズムの時代が幸せとはかぎらない。むしろ、江戸時代のようなローカリズムのほうが幸せだったりする。どちらがいいかは単純な話ではなくて、人間の本性として振り子を繰り返すということだ。

 大事なことは、第2次大戦後はずっとグローバリズムのほうに振り子が振れてきたということだ。

 昔はアメリカとソ連という2つの帝国によるグローバリズムだし、その後は、アメリカという帝国によるグローバリズム。つまり、過去70年間に渡って、世界はグローバリズムの時代だった。

 しかし、70年も一方に進むと、そろそろ反対に振れる。

そのときに大事なのは、振り子が振れるのは歴史的必然なので、それを前提にして、社会や政治の仕組み、自由貿易協定のあり方を修正していくことだ。移民政策もリアリズムに則って修正していく必要がある。

 グローバリズムの果実、メリットを棄損しないようにうまくローカルへの関心、注力を高めていく工夫だ。もともとグローバル経済圏がローカル経済圏を搾取しているわけではないので、これは可能なはずだ。

 さらに、インテリの間違いについて厳しく言及する。

 

 インテリの間違いは、グローバリゼーションが後退すると、経済成長しなくなると思い込んでいることだ。それは完全な錯覚と言える。

 先進国におけるグローバル経済圏の貢献度はかなり小さくなってきており、それほど成長に影響がない。むしろ、ローカル経済圏で生産性を上げたり、イノベーションを起こしたりするほうが成長にとってはるかに大事だ。だから、グローバル化が後退してもそんなに悲観する必要はない。

 実際、トランプ勝利後も、アメリカの株価は下がっていないし、イギリスの株価も一時期より戻ってきている。だから、実体経済にとってそこまでグローバリゼーションの限界的な寄与はもう大きくない。

 そして事実として、世界の貿易量が減っている。

 今、猛烈に生産と消費の体制が地産地消型になってきている。グローバリゼーションが一回りすると、地産地消化が進んで、貿易量が減っていく。

 インテリが間違った思い込みをしやすいのは、イデオロギーのメガネをかけてしまうからだ。赤いメガネをかけると、何でも赤く見えてしまう。左右対立も1つのメガネだ。

 

 ざっとこのような主張であるが、私はこの分析は概ね当たっていると思う。日本の馬鹿な左翼には、トランプは極右であり、またぞろ戦争を始めるだろうと主張している人がいる。

 かつては豊かだった白人中間層が、低賃金で働く移民に職を奪われ、職があっても賃金が全く上昇しないことに腹を立て手居て、それでトランプを支持したのだ。これは右か左かとというイデオロギーによるものではなく、かつてのような豊かさを取り戻したいという米国人の白人中間層の率直な気持が、グローバリゼーションに拒否反応を示しているのである。

 さて、このようなローカリズムへの回帰は、実は国と地方との間でも起きている。スペインのカタルーニャ地方が独立のための運動の広がりを見せているし、英国でもスコットランドが独立したがっている。

 GとLとの対立のままで終わるのか。それとも、GとLを融合した新しい展開が待ち受けるのか。その結論を見る前に私の命が尽きそうだ。

https://newspicks.com/news/1888670/body/

孤独な自獄論者

何にも縛られず思い付くままに好き放題に書いています。 物言わぬは腹ふくるるわざなり

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