正論

まず、皇室に関して最も大事な三つの原則を確認しておく。一つ目の原則は、皇室は先例を貴ぶ世界だということである。わが国は初代神武天皇の伝説以来、2679年の一度も途切れたことがない歴史を誇る。風の日も雨の日もあったが、昨日と同じ今日をこれまで続けてきた。幸いなことにわれわれの日本は、この幸せが明日も続きますように、と言える国なのである。

 皇室の祖先である神々を祀っている最も格式の高い神社は、伊勢神宮である。正式名称は神宮。ユーラシア大陸でイスラム教が勃興した西暦7世紀には既に、「いつの時代からあったか分からないほど古い時代からあった」とされる。神宮では毎日、日別朝夕御饌祭(ひごとあさゆうおおみけさい)という神事が行われている。毎日、同じ御食事を神様に捧げる。昨日と同じ今日が続いてきた証として。そして今日と同じ明日が続きますようにと祈りを込めて。

 京都御所の鬼門を守るのは、比叡山延暦寺だ。その根本中堂には、伝教大師最澄が灯した不滅の法灯が今も光を放っている。叡山は三度の焼き討ちにあったが、そのたびに他の地に分灯していた火を戻し、1300年前に伝教大師が灯した光が消えることはない。毎朝、たった一筋の油を差す。その行為自体に何の意味もない。

 しかし、毎朝油を差し続けているから、不滅の法灯が消えることはない。いかなる権力があろうと、武力や財力があろうと、今から神宮や不滅の法灯を超える歴史を作ることはできない。不滅の法灯は個人ではなし得ない。歴史を受け継いだからこそ存在しているのだ。

 歴史に価値を認めない人間にとっては、何の意味もないだろう。そもそも不滅の法灯など、物理的には一吹きの息で消え去る。いくら言葉を尽くしても、「不滅の法灯などという面倒なものはやめてしまって、電球に取り換えればいいではないか」という人間を説得することなどできまい。そのような人間には、歴史を理解することができないからだ。先例など、何の意味も持つまい。

 そういう人間は日本にもいた。それなのに、なぜ皇室は続いてきたのか。変えてはならない皇室のかたちを守ろうとした日本人が続けてきたからだ。もし、日本人が「皇室などやめてしまえ」「これまでの歴史を変えてしまえ」と思うなら、先例など無視すればよい。ただし、それはこれまで先人たちが守ってきた、皇室を語る態度ではない。

中略


二つ目の原則は、皇位の男系継承である。今上天皇まで126代、一度の例外もない。八方十代の女帝は存在するが、すべて男系女子である。男系継承をやめるとは、皇室を亡ぼすのと同じである。

 現在、悠仁親王殿下まで、一本の糸でつながっている。その今、男系をやめる議論をすること自体が、皇室に対する反逆だ。いかに、これまでの歴史をつないでいくか、たった一本の小さな糸を守るべきかを考えなければならない。それをやめる前提の議論など、不滅の法灯をLED電球に変えようとするのと同じである。

 蘇我入鹿も、道鏡も、藤原道長も、平清盛も、足利義満も、徳川家康も、皇室に不敬を働いた権力者は数あれど、誰一人として皇室に入り込むことができなかった。この中で陛下と呼ばれた者は一人もいないし、息子を天皇にした者はいない。せいぜい、自分の娘を宮中に送り込み、娘が生んだ孫を天皇にするのが、限界だった。男系の原則が絶対だからだ。それを今さら男系継承をやめるとは、今までの日本の歴史は何だったのか。男系継承は、皇室が皇室であり続ける、日本が今までの日本であり続ける原則なのである。

 三つ目の原則は、直系継承である。間違ってもらっては困るが、「男系継承の上での直系継承」だ。二者択一ではない。世の中には、勉強のしすぎで肝心な原則を忘れ、女系論を振り回す論者がいる。この人たちの言い分は、直系継承である。三分の理はある。しかし、肝心な原則である男系継承を無視して女系論を振り回すから、世の常識人に鼻をつままれるのだ。

中略

 先帝陛下には先の美智子陛下がいらっしゃった。今上陛下を支える筆頭は、東宮となられた秋篠宮殿下である。将来、悠仁親王殿下が皇位を継がれ、日本国は守り継がれていく。

 さて、ここまで皇室の歴史を簡単に振り返ったが、「愛子天皇」待望論を唱える者たちは、今の皇室の直系をなんと心得るか。いずれ皇統の直系が悠仁殿下の系統に移られたとき、愛子内親王殿下も陛下をお支えする立場にある。

 それを、畏(おそれ)れ多くも悠仁親王殿下がおわすのに、どういう了見か。直系を悠仁親王殿下から取り上げようと言うのか。

 もう一度、壬申の乱を起こしたいのか。それとも保元の乱か。はたまた、南北朝の動乱を再現したいのか。

 今この状況で、「愛子天皇」待望論を唱える者たちよ。貴様たちは自分の言っていることが分かっているのか。

 悠仁親王殿下につながる直系をお守りする。これが、臣民の責務である。

https://ironna.jp/article/12479

孤独な自獄論者

何にも縛られず思い付くままに好き放題に書いています。 物言わぬは腹ふくるるわざなり

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