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中国外交は、硬直化している。トランプ政権時代、米国の社会的な混乱を見て、「米弱体化」という結論を出し一挙に戦いを挑む青写真を描いた。つまり、西側諸国の政党政治、選挙制度よりも、中国共産党が全てを決める政治制度が優れている、と錯覚したのだ。
民主政治は、結論を出すまで甲論乙駁で意見がなかなかまとまらないものである。だが、方向が決まれば協力するのが特色だ。米国は、第一次・第二次の世界大戦で参戦忌避のムードが高かった。第一次世界大戦では、米国がドイツの無制限潜水艦作戦再開により断交し、1917年に参戦した。
第二次世界大戦では、日本の真珠湾奇襲攻撃がきっかけである。ただ、米国は日本軍の暗号電報を事前に解読し、真珠湾攻撃を知っていたという学術研究がある。だから、真珠湾から空母をすべて避難させ、総反撃に備えていた。事実、米海軍は7ヶ月後のミッドウェー海戦において、日本の連合艦隊を壊滅に追込んだ。
米国が、挙国一致で立ち上がった時の強さは、とうてい中国の専制主義の及ぶところでない。これが、民主主義政治の強さである。中国は、共産党が全てを決める政治制度を自慢する。これは、世界史や米国史を深く学んでいない戯言に聞えるのである。
未だに、専制主義に固執している国は、世界広しといえど中国ぐらいだろう。歴史の流れは、専制主義→封建主義→民主主義という過程である。中国は、封建主義にも至っていないのだ。極端に言えば、日本の鎌倉時代か戦国時代の政治状況であろう。民衆は、人権を弾圧されて虫けら同然の扱いである。
米国を甘く見る中国の陥穽
中国は、トランプ時代の米国の社会的混乱が、トランプ政権2期目も継続すると見ていたのであろう。だが、バイデン政権の登場で状況はがらりと変わった。トランプ氏の対中強硬策を引継ぎ、国内政策では6兆ドル予算によって内政を充実させる方向を打ち出している。バイデン氏によって、トランプ氏の中国観は正しかったことが立証されている。その面での功績は、評価されてしかるべきである。
米中関係は現在、爆発しかねない危険な問題が埋め込まれた地雷原のようだとされている。その中でも最大のリスクは、中国が米国の力の衰退を過信し、その認識に従って行動することである。この危険性は、戦前の日本にも当てはまる。連合艦隊を率いた山本五十六司令長官は、「半年か一年は暴れてみせましょう」と語って対米開戦へ踏み切った。中国も米国の実力を過小評価していると、同じ過ちを冒すであろう。
第二次世界大戦で米国は、日本・ドイツ・イタリアと戦った。予想される対中国戦では、かつて米国と戦った枢軸国が、いずれも米同盟国になっている。中国にとって、「米国弱し」と甘く見ているととんでもない結果になる。米国は、同盟国の結束を固める戦略に出ているのである。中国の相手国は、米同盟国全体に膨れ上がっているのだ。
バイデン政権の戦略は、中国政府との本格交渉に臨む前に、米国の経済・外交・軍事面の底力を明確に示そうと努めることで、米国が政治的に分断され衰退しつつあるとの中国の主張に対抗しようというものである。そのメッセージは、「米国の力を見くびるな」という単純明快なものだ。
米国が、同盟国を結束させ影響力を示そうとする努力は、バイデン政権による「クアッド」重視から確認できるはずである。クアッドは、日本、米国、豪州、インドの4カ国による非公式の連携枠組みだ。現状は緩い形だが、伝統的に「非同盟」を貫いてきたインドへの配慮である。インドが参加し易いようにしたものだ。
クアッドは、結束を固めるために今秋、2回目の首脳会談を予定している。日米豪海軍は、フランス海軍と合同演習を行なうほど密接なつながりを持っている。明らかに中国軍を意識した演習である。
米国は、クアッドを基軸にして日米首脳会談と米韓首脳会談を開催した。いずれの共同声明でも、「台湾」に言及して対中国意識を鮮明にしている。これまでの韓国は、北朝鮮問題を抱えて中国の支援を期待してきたので、「中国問題」はタブーであった。その韓国まで「台湾」に言及したのは、日米韓三カ国が中国に対して共通認識を持っていることを世界に示した。
韓国については残念ながら、その本心がどこにあるかは疑わしい面もある。事前に、米韓首脳会談の共同声明の文案を中国へ通報している事実が発覚しているからだ。ただ、こういう「裏切り」は、進歩派(民族主義)の文政権特有のことかも知れず、保守派政権になれば状況が変わる可能性を残している。唯一の「救い」は、米韓首脳会談の共同声明で「台湾」に言及した事実である。これは、今後の韓国外交の方向性を縛るはずだ。
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