http://www.jfss.gr.jp/home/index/article/id/465
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国際通貨基金(IMF)は、中国政府の公表する数字に対し寛容である。例えば、北京の発表するGDPに関して、殆ど何の疑いも抱かずに、その数字を使用している。
そのIMFが、今年(2017年)、中国的家庭・企業・政府の債務のGDPに占める割合が、去年(2016年)の242%から、2022年には300%に近づくとの予測を発表した。異例である。
さて、現在、米国で活躍している何清漣の最新中国経済分析(コラム)をまとめて紹介したい。
第1に、2008年の「リーマン・ショック」で、当時、胡錦濤政権は、少なくとも4兆元(約60兆円)の財政出動をした。そして、国内で主に建設業(特にマンション)へ投資し、30年分の住宅を供給した。その結果、巨大なバブルを産み出している。
目下のところ、中国地方政府の財政は、過度に不動産に依拠している。これでは、当然、不動産バブルを助長するだけだろう。
第2に、一部の国有企業は「ゾンビ企業」となっても、銀行からの“輸血”を受けている。そのため、銀行の不良債権が増大している。
2013年5月、中信里昂證券有限公司(CITIC CLSA)が公表したレポートでは、中国の債務規模は107兆元(約1605兆円)で、その半分以上は、2009年以降に生じたという。その規模は、当時の中国GDPの110%に相当する。特に、シャドーバンキング(ノンバンク)の債務が増えている。
第3に、2009年来、中国人民銀行(中央銀行)は、日本・米国・EUより多くの紙幣を印刷している。
2012年、全世界で26兆人民元(約390兆円)が新貨幣として印刷されたが、その半分近くは中国で印刷・発行されている。
今年6月、石小敏(中国経済体制改革研究会元副会長)は、インタビューの中で、2009年来、中国は人民元を増やす事で成長を遂げてきた。だが、米ドル換算では、ここ2年(2015年・2016年)の中国のGDPはゼロ成長に近いと証言している。
第4に、米トランプ大統領は、(海外へ出て行った)「製造業を国内へ戻す」との選挙公約を実行に移している。
他方、周知のように、中国では、かつての安価な土地・労働力、優遇税制等の優位が失われ、外資が中国へ投資するメリットが少なくなった。
第5に、2001年、中国がWTOに加盟して以来、投資(2001年から2010年の10年間は外資が主力)、輸出、内需の3本柱が中国経済を牽引してきた。とりわけ、輸出の伸張が著しかった。ところが、近年、陰りが生じている。
輸出に関して、現在、中国は、東南アジアや南アジア(ベトナム・バングラデシュ・スリランカ等)の国々に追い上げられている。
第6に、習近平政権は、外需獲得のため「一帯一路」構想を打ち出した。そして、中国4大国有銀行は、最低でも100億米ドル(約1兆1000億円)以上の融資を開始しようとしている。
中国だけの出資ならともかく、「一帯一路」に沿う国々も出資する必要が出てくる。果たして、途上国の場合、本当に出資できるのかどうか。これらが、プロジェクトのリスク要因となるだろう。中国国有銀行の不良債権増大が懸念される。
第7に、中国はなるべく人民元で出資しようとする。だが、多くの国々は、近頃、元安傾向にあるので、人民元での投資を歓迎していない。従って、人民元のグローバル化には限界があるだろう。
実際、2016年、主要国際金融センターにおける人民元使用量は前年比10.5%減少した。
第8に、中国商務部(商務省)が公にした数字では、2017年1~6月、中国企業は「一帯一路」沿線47ヵ国に66.1億米ドル(約7271億円)、非金融類の直接投資を行った。だが、前年同期比で3.6%減っている。
最後に、中国の当面の3大リスクとは、(1)バブル崩壊の危機、(2)人民元安で資本の海外流出の危機、(3)銀行の不良債権増加の危機――である。
2016年2月、ヘイマン・キャピタル・マネッジメント(Hayman Capital Management)の創業者カイリー・バス(Kyle Bass)は、中国銀行業の損失は、3.5兆米ドル(約385兆円)に達すると指摘した。
他方、今年8月、金融の分析に定評のある朱夏蓮(Charlene Chu)は、最新の報告書で、今年末には、中国の不良債権は、51兆人民元(約765兆円)にのぼると予測している。この数字は、貸付額全体の34%にも匹敵する。中国政府の公表している5.3%とは、6倍以上の開きがある。
目下、習近平主席は、来月10月18日開催の中国共産党第19回全国代表大会(19大)開催に向けて、着々と準備を進めている。
しかし、李克強首相が続けて首相を務めるにしても、他の政治局常務委員が李首相に代わって新首相に就任しようとも、中国経済の運営は困難と言わざるを得ない。
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死那の大企業はすべてといっていいほど国営企業だと言われている。そして、上海閥、太子党、共青同のそれぞれが利権を持っている。だから、過剰設備があることが分かっていても、それぞれの利権を手放したくないので、いつまで経っても国営企業の整理が始まらない。
過剰債務=過剰設備==過剰在庫=過剰人員であるから、一刻も早くこれらを整理して、債務削減に努めるのが経済原則に沿った王道であるにも拘わらず、それができない根本的な理由がここにある。
今後の死那狂惨党の行方が気になる。宮崎正弘さんの興味深い記事を取り上げよう。これは福島香織さんが出版した本を読んでの感想だが、実に興味深い。
http://melma.com/backnumber_45206_6542896/#calendar
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評者(宮崎)は、本書を通読したあと、なぜか連想したのは小林秀雄の石原慎太郎への助言だった。
古い話かもしれないが、な昭和四十三年(1968)、石原が参議院全国区から立候補して政治家になるというと「君の周囲に君のために死ねる人は何人いるかね? 君のために死ぬ人間がたくさんいれば、君は政治家として成功するだろう」と予言的な言葉だった。
三島由紀夫にはともに死ぬ同士があまたいた。しかし石原にはおらず、晩節を汚すことになった。
習近平には、かれのために死ぬ同士が不在である。
第十九回大会を無事に乗り切るには、強引な指導力で派閥を糾合する必要があるが、すでに習には、その求心力がない。暴力装置を党内に持たず、したがって習には強い味方がおらず、友達も同士もいない。裸の王様でしかなく、独りぼっちである。王琥寧も栗戦書も劉鶴も、習から距離を置き始めている。
さらには太子党の、強い兄貴分だった劉源が去り、軍部は習の茶坊主たちの異様出世状況を見て、不満が爆発している。これを抑える政治力は、すでに習近平にはない。
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友達のいない習近平が、このまま古代中帝国の皇帝のように振る舞う未来が続くのか、それとも一気に潰されてしまうか。死那の権力闘争の凄まじい展開が見られるのはそう遠くない。
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