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中国の習近平政権は現在、最大の経済危機に直面している。物価の長期低迷が象徴するように内需不振が深刻である。その原因は、不動産バブル崩壊にある。こうして、経済面では「日本化」が進行中だ。これを切り抜けるべく、独裁強化によって政治面での「ソ連化」も進んでいる。中国共産党にとっては、致命的な事態である。もがけばもがくほど、深刻化する悪循環過程へ嵌まり込んでいる。
こういう状態にさらなる重圧がかかった。世界的な格付け会社ムーディーズによって、中国の格付けを一段階引下げる予告がされた。格付け引下は、中国の対外的な信用度が下がることを意味する。これによって、海外での新規の資金調達金利が上がる。債券全ての発行条件が悪化する。過剰債務を抱える中国は、厳しい現実が到来する。
物価総崩れデフレ深刻
11月の消費者物価指数は、前年同月比マイナス0.5%である。10月に続いてのマイナス基調である。消費者物価指数は、23年5月以降0%を挟んで上下する低迷状態が続いている。当局の説明では、「秋口から回復する」とされてきたが、逆の状態へ落ち込んでいる。11月で目立つのは、中国の食卓に欠かせない食材で、物価に大きく影響する豚肉が31.8%の大幅なマイナスとなったことである。大好物の豚肉消費を削るほど、生活状態が悪化している象徴的な事例だ。
11月の生産者物価指数は、前年同月比マイナス3.0%である。22年10年から連続のマイナスであり、マイナス幅は10月の2.6%から拡大した。産業構造の川上や川中にあたる生産財は3.4%下落したほか、川下の最終製品など生活財も1.2%の下落である。
以上のように、物価状況からみた中国経済は総崩れである。典型的な不況局面に突入しているのだ。この背後には、20数年も続いてきた不動産バブルの崩壊という構造変動が起こっている。この問題に対する当局の解決策と言えば、小手先のものばかりで消費者の不信感を根本的に取り除くものは皆無だった。住宅ローンの貸出条件を緩和させる、従来型の政策を発動させたが短期的効果に終わった。「傑作」なのは、2軒目、3軒目の住宅購入者にも条件を緩和するという矛盾だ。
これは、明らかに習氏の唱えてきた「住宅は住むためで投機目的でない」という政策に反することである。こういう矛盾したことを堂々と行ってまで、住宅販売にしがみついてきたのだ。一方で、未完成住宅工事問題は手つかずであった。約3000万人が、この被害者であるにも関わらず、政府は何らの対策も取らずに、不動産開発業者の責任追及という形で問題の本質を逸らしてきた。
業者は、すでに不動産バブル崩壊で工事継続能力がなくなっている。代わって政府が、これら未完成工事を財政支出で完成させて、国民を安心させなければならない立場である。だが、当局にはそういう「大所高所論」的な認識がゼロである。責任回避姿勢である。
習氏は、中央政府の財政赤字拡大を最後まで忌避してきた。単年の財政赤字は、対GDP比で3%にとどめるという長年の慣行を守ろうとしてきたのである。これによって、「有能な国家主席」という評価を得たかったのだろう。事態は、平時に守るべき財政規律に縛られている状況ではない。3000万人の庶民が、住宅ローンを払い続けながら完成した自宅を手に入れられない緊急事態なのだ。習氏が、個人の名誉に拘っていられない状況にもかかわらず、旧慣墨守という認識遅れにとらわれてきた。
格付け引下げ予告爆弾
格付け会社ムーディーズは12月5日、中国の信用格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に変更した。中国は、不動産不況をきっかけに財政余力が低下しているためだ。現在は、上から4番目のA1(シングルAプラス相当)だが、これを1段階引下げるという予告(ネガティブ)をしたのである。
ムーディーズの格下げ理由は、次のような点にある。これは、中国経済が抱える根本的問題点を鮮やかに「摘出」している。本メルマガがこれまで縷々、取り上げてきた問題点が勢揃いした感じである。
1)財政問題:財政・経済に幅広い下振れリスクが存在する。
2)融資平台:土地使用権収入の喪失は、地方政府の融資平台への支援余地を弱めている。
3)経済成長:2030年までに潜在成長率は、3.5%程度までに低下する。
以下に、私のコメントを付したい。
1)中国政府は、GDPに対する政府債務比率を国際的な警戒ラインである60%以下にすることを目標にしてきた。一方では、大きな抜け穴を用意していた。地方政府が政府部門であるにも関わらず、「隠れ債務」をつくらせてきたことだ。この結果、中央政府が財政難に陥った地方政府へ財政支援を行う羽目になっている。こうした過剰債務の存在が、中国経済に重圧となって成長率を屈折させるリスクを大きくさせている。(つづく)
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