「中国民生投資集団」(中民投、CMIG)の「16民生投資PPN001」という社債は1月29日が償還日だったが、償還が延期された。当初、技術的問題、と説明されていたが、結局債務不履行となった。償還できなかったのは、太陽光パネル投資の失敗や企業買収による負債からくる資金の流動性の困難が原因だったとか。
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中民投は当初は太陽エネルギーパネル、鉄鋼物流、船舶の3分野に投資してきた。これらは中国の“過剰産業”だが、中民投はこうした過剰産業の企業整理を促進する役割も担わされていた。
中でも太陽光パネルへの投資は、中国ネットニュースサイト「澎湃新聞」によれば、この5年で1500億元、発電設備の出力に換算すると20GW(ギガワット)という。2015年には寧夏に世界最大の単体太陽光パネル発電所を建設するプロジェクト(2GW規模)に150億元を投じた。その年の寧夏全域の太陽光発電量指標は、わずか600MW(メガワット:1GW=1000MW)程度である。それに対して、2016年6月に1期工事が終わった段階での寧夏送電網における電力生産能力規模は、380TW(テラワット:1TW=100万MW)と寧夏日報は報じた。あの砂漠のど真ん中で、そんなに電力が必要だったのか。
いや、そんなことよりも中民投にとって重要だったのは、その時点で中国政府が太陽光発電導入の上潮ムードを盛り立てており、買い取り価格への補助金制度もあったことだった。習近平政権は環境保護に特に力を入れている。中国の場合、民営企業でも市場の需要より政治の空気を重視する。
だが2018年、国家発展改革委員会、財政部、国家エネルギー局は、突如、中国の太陽光発電関連産業の発展に急ブレーキをかけるような通達を次々と発表する。1200億元の補助金不足が発覚したのをきっかけに、政府としても太陽光バブルを弾けさせるほかなかったのだ。
一番影響が大きかった通達は、2018年6月の「進行中の太陽光発電所建設の計画をすべて一時棚上げする」というものだ。補助金はほとんど削減され、太陽光発電の電力の全面的値下げ、全面整理を通達した。これにより中国の太陽発電市場は1000億元規模も縮小、ほとんどの太陽光発電関連工場が停止し、関連企業がばたばた倒産に追い込まれた。太陽光発電関連産業は暗黒期に突入したのである。中民投は国家の電力政策にあおられて、梯子(はしご)を外された格好だ。
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このデフォルト騒動で、中民投が発行している債権17中民G1、18中民G1、18中民G2が軒並み取り引き停止になった。中民投は、民営企業に投資し、株主になり、経営に参与し、民営企業を立て直すというこれまでの経営戦略方針を転換。手持ちの優良な企業株を売り、利益が出ない企業は整理して、投資中心の戦略に変えていくようだ。
中民投が持っている最も良質の資産といわれる上海の董家渡地域の開発プロジェクトの債権は、上海国有資産委員会の後ろ盾をもつ緑地ホールディングスに121億元で譲渡。この土地は、デフォルト騒動が表沙汰になる前に上海金融裁判所に差し押さえられていた。
また、中民投傘下の筆頭投資会社である「中民文化投資集団」の経営からも手を引き始めているようだ。中民文化投資集団の株主は14法人だったが、7法人に減った。減った株主法人はみな中民投の子会社だった。
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今年早々、人民大学の向松祚教授が、中国に「ミンスキーモーメント」(バブルが崩壊に転じる局面)が来る可能性を強く訴えていたことが話題になった。その時、向教授が最大の“灰色の犀”として指摘していたのは不動産バブルだ。中国の不動産市場規模は売り出し中不動産の延床面積から推計すると60兆ドル。全世界の1年分のGDPを合わせても70兆ドルあまりなのに、そんな馬鹿な話があるか、ということだった。
中国の株式市場A株の利潤の4分の3をわずか40社余りの不動産企業と銀行が占め、GDPの48%を占める家計債務の7割以上が不動産・住宅関連ローンで、地方政府収入の7割を占める政府性基金の9割が土地譲渡関連という状況で、不動産バブルが崩壊すれば、地方政府財政から企業から一般家庭まで阿鼻叫喚となるのは目に見えている。
不動産バブルと社債デフォルトという番いの犀が走り出せば、金融システミックリスクという犀の群れ全体が大暴れして、中国の市場を踏み荒らし、そこから飛び出して世界を踏み荒らしまくるかもしれない。
犀の角を不老長寿の薬と信じている富裕中国人は、密猟のやりすぎでアフリカの犀を絶滅の危機に追い込んできた。今、中国経済・金融マーケットに生息する犀は、中国を絶望的危機に追い込むかもしれない。これは犀の呪いというべきか?
筆者:福島 香織
何とも恐ろしい話だ。このまま死那が崩壊すれば世界に多大な影響を与える。習近平は民間会社の経営などには興味がなく、国営企業のみしか救わないのだろうが、あまりにも影響が大きいので、デフォルトにでもなれば、死那の企業全面的に信用を失う。つまり、資金繰りが付かない死那の企業が多数発生する。死那のサイが大人しければ良いのだが、突然暴れ出すサイが多数いるのではないか。
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