超賤半島の分割

――北朝鮮に非核化するつもりなど全くない、ということですね。

鈴置: その通りです。この文書には偽書説もあります。しかしそうであっても、中国の危機感は収まらない。米政府の運営するVOAが「金正恩に非核化の意思がないことが判明した」と報じたのです。

 米政府が「米国を騙して核を持とうとする国は許さないぞ」と宣言したのと同じです。VOAは5月23日に「米国は北朝鮮を先制核攻撃できる体制を整えている」と脅したばかりです(「米国が北朝鮮を先制攻撃するなら核を使うか? その時、韓国は? 読者の疑問に答える」参照)。

 常識から考えても、金正恩委員長が核を手放す可能性はゼロに近い。非核化した瞬間に攻撃されると考えるのが普通です。リビアのカダフィ大佐も核を手放して身を滅ぼしました。

中略

 中国にしろ、ロシアにしろ、「緩衝地帯」としての北朝鮮は必要です。しかし、それが「金正恩の北朝鮮」である必要はどこにもない。

 むしろ、「非核化」のどさくさにまぎれ「危険な政権」を、問題を起こさず自分の言うことをよく聞く政権にすげ替えたい、というのが本音でしょう。

中略

――どうやって北朝鮮の政権を交代させるのですか? 

鈴置: 中国が経済封鎖を実施し、食糧や肥料の輸出・援助もすべて止めれば、金正恩体制は長く持ちません。動揺を見定めて人民解放軍を送り込み、トップに中国派を据えてしまえばいいのです。中国には「地続きの利」があります。

 核を弄び、他国民を拉致するテロ政権を倒すのですから、文句を言う国は出ません。不満を表明するのは、北朝鮮とスクラムを組み「民族の核」保有を目指す韓国ぐらいでしょう。が、文在寅(ムン・ジェイン)政権に「金正恩体制解体」を阻止する力はありません。

中略

「朝鮮半島の統一シナリオ、4カ国が分割統制か?」(2015年8月4日、韓国語による動画)で見ることができます。それを基に作成したのが「北朝鮮4カ国分割統治地図」です。

韓国は「戦犯国」に認定

 この「中国案」では、羅津(ナジン)港を含む咸鏡北道はロシアが統治します。ロシアに念願の「極東の不凍港」を与えるなど、顔を立てています。

 中国は自国に接する広大な地域を、東北部を除き管轄します。咸鏡南道も得て、初めて日本海側への出口を獲得します。中国にとって実に都合のいい線引きでして、それだけに本物らしく見えるのです。

 米国と韓国は北朝鮮の南半分を得ます。それにより、韓国は首都・ソウルが軍事境界線と40キロほどしか離れていないという脆弱性をある程度、改善できます。

 ただ、この案は韓国が保守政権の時代に表に出たものです。今の親北反米の韓国は、露骨に北朝鮮の核武装を幇助しています。金正恩体制の崩壊後、韓国は連座して戦犯国家に認定される可能性が高い。となると、こんな配慮はしてもらえないかもしれません。

――「金正恩後の分割案」まで存在するのですね。

鈴置: 結局、北朝鮮の非核化の行方は米中、それにロシアが加わって決めることになります。核を持った国々です。

 今回、中国は14年ぶりに国家主席を北朝鮮に送りました。2006年10月の北朝鮮の第1回目の核実験以降、初めてです。

 どういう形の解決策になるかは中国も分かっていないでしょう。でも、ついに重い腰はあげたのです。


https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190621-00567520-shincho-kr

孤独な自獄論者

何にも縛られず思い付くままに好き放題に書いています。 物言わぬは腹ふくるるわざなり

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